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日本における女性社会進出と企業活動ー女性社会進出指標と企業パフォーマンスを中心に


学芸学部 英語文化コミュニケーション学科 九里徳泰

研究概要

 国連SDGs(持続可能な開発目標)(※1) 5.において「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」が重要課題とされている。また2015年施行の女性活躍推進法で、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画が日本企業を含めた組織に求められている。本研究では、日本における女性の社会進出、特に企業において女性の社会進出がどのような状態にあり、女性の社会進出の量的拡大と質的向上に企業行動がどのように寄与しているのかを統計学的に分析し、政策提言することを目的とする。
 具体的には、日本企業における女性の社会進出を活発化させ、政府目標である2020年までに指導的女性比率30%という目標を達成するには企業がどのようなビヘイビア(振舞い)が必要かを明らかにすることにある。
 学術的貢献としては、企業経営研究において企業活動としてのCSR(企業社会責任)(※2) パフォーマンス(CSRとしての企業における女性の社会進出)をどのように測定・評価するかは重要な学術的課題であり、CSR活動と企業業績との因果関係を明らかにしてゆくことも大きな目的である。

研究の背景

 国連SDGs(持続可能な開発目標)5.においてジェンダー平等と女性のエンパワーメントが重要課題とされている。2015年施行の女性活躍推進法で、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画が日本の企業を含めた組織に求められているが、その実態はどのようなものか。日本の女性の社会進出、特に企業において女性の社会進出がどのような状態にあり、その量的拡大と質的向上に企業行動がどのように寄与しているのかが現在不透明な状況である。また政府目標である2020年までに指導的女性比率30%という目標を達成するには企業がどのようなビヘイビア(振舞い)が必要なのか。以上の理由により日本企業における女性の社会進出を活発化させる政策提案は急務であることから本研究の着想に至った。
 国内外の研究動向と本研究の位置づけは以下となる。日本を対象にした研究は極めて限定的で、金融機関のレポートが数編ある程度である。代表的なもので、柴野幸恵ら「職場における女性活躍推進~女性の進出を支援する企業を特定する~」MSCI,2017年がある。海外ではHong and Page. (2004)が組織における女性優位性の実証研究を行っている。Kaplan et al(2011) も同様な報告をしている。Eastman and Rallis (2016) では米国企業とROE の優位な関係性を明らかにしている。Pfeffer and Salancik (1978)は資源依存理論の観点から、企業役員のダイバシティと優位な企業活動に言及している。Hillman et al (2000) は企業役員のダイバシティの企業外部環境との関係の重要性を指摘する。以上の先行研究概要より、本研究は日本で初めての女性の社会進出と企業の業績及び影響経路を探索する学術的な研究であると言える。

研究成果

 本研究は、研究期間の途中であるが、以下の成果が出ている。本研究は、女性の社会進出と企業活動の定量的な分析をし、女性活躍企業と業績の関係性を明らかにする調査、分析が目的である。
  1. 本研究の基礎となる研究発表を、「企業の環境・CSRパフォーマンスと企業業績の関係性に関して」というタイトルで工業経営研究学会、2018年9月に追手門大学にて、企業の環境・CSRパフォーマンスと企業業績の関係性のメタアプローチに関して発表した。
  2. 本研究の初年度の研究成果となる発表をタイ・バンコクで開催された10th Global Conference of Environmental and Sustainability Management Accounting Network Asia-Pacificにて口頭発表を行った。発表論文は「ESG(※3) Investment and Japanese CSR Activity Focusing on Women's Participation in Japanese Company」(査読付)で日本企業における女性パフォーマンスと企業財務に関し女性の働きやすい日本企業47社の分析を行った。47企業に対し、独立変数は純売上高、従業員数、女性労働者の割合、新人の割合、中堅女性労働者の割合、女性管理職の割合、女性役員の割合、勤続年数の差、男性の育児休暇率、なでしこブランド認証数とした。従属変数はROEおよび調整済み業界平均のROEを加味したROEである。結果は高いダイバーシティレートのある会社はより高いROEであった。なでしこブランドカンパニーROEは平均東証ROEを上回っていて、なでしこブランド認証は、投資家にとってポジティブなポートフォリオとしての評価を得る可能性があることを明らかにした。重回帰分析の結果、なでしこブランド認証の取得は、ROEとのポジティブな関係であった。

これからの展望や社会的意義

 本研究の最終的なゴールは、どのようにしたら多くの企業において組織内の女性の社会進出がなされるかである。キーとなる要素は、女性の労働率の増加、男女の賃金の不均衡の是正、女性管理職の増加、女性の専門職、技術職の増加にある。

専門用語解説

  • ※1 SDGs:Sustainable Development Goals。2015年国連が提唱した「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」。17のグローバル目標と169のターゲット(達成基準)から成る。193か国が批准。
  • ※2 CSR:Corporate Social Responsibility 企業の社会的責任 公害の環境問題から、労働の社会問題など、企業との直接・間接利害関係がある企業の振る舞いに関する責任
  • ※3 ESG:Environment,Social,Governance(環境、社会、企業統治)から企業を経営し、評価する3要素。

参考文献(掲載順)

  • Hong, L. and S. Page. (2004) Groups of Diverse Problem Solvers Can Outperform Groups of High-ability Problem Solvers. Proceedings of the National Academy of Sciences Vol., 101, No. 46, pp. 16385-16389.
  • Kaplan, D.M., J.W. Wiley and C.P. Maertz Jr. (2011) The Role of Calculative Attachment in the Relationship Between Diversity Climate and Retention. Human Resource Management, Vol. 50, No. 2, pp. 271-287.
  • Eastman, M.T. and Rallis, D. (2016) The Tipping Point: Women on Boards and Financial performance – Women on Boards Report 2016, MSCI ESG Research.
  • Pfeffer, J., and G. Salancik(1978), The external control of organizations: a resource dependence perspective, New York: Harper & Row.
  • Hillman, A., J. Cannella, and R. Paetzold(2000), The Resource Dependence Role of Corporate Directors:Strategic Adaption of Board Composition in Response to Environmental Change, Journal of Management Studies 37,pp.235–255.

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