日本におけるボクシングのローカル化に関する研究
ボクシングという競技が、どのようなかたちで日本に根付いてきたのかを明らかにしました。
人間社会学部 社会マネジメント学科 木本 玲一
(私は学習院大学東洋文化研究所のプロジェクト「日本近世から近代における<国家>意識の文化的諸問題とアジア」に参加しており、本研究はその成果でもあります)
人間社会学部 社会マネジメント学科 木本 玲一
(私は学習院大学東洋文化研究所のプロジェクト「日本近世から近代における<国家>意識の文化的諸問題とアジア」に参加しており、本研究はその成果でもあります)
研究概要
これまで私は、外国の文化がどのように日本に根付いてきたのかということを研究してきました。専門的にいえば「文化のグローバル化・ローカル化」というテーマです。特に近代以降、グローバル化・ローカル化は世界各地で活発になってきました。私は「文化のグローバル化・ローカル化」に関する研究の一環として、ボクシングという競技がどのようなかたちで日本に根付いてきたのかを明らかにしました。時期としては明治から昭和初期までを扱いました。以下でも述べているように、ボクシングのローカル化に関しては、ほとんど何も知られていませんでした。そのため本研究は、スポーツ史や武道史、またその隣接領域に新たな貢献をするものだといえます。
研究の背景
スポーツのローカル化に関する研究は、日本でも一定の蓄積があります。しかしボクシングに関しては、あまり学術的な研究の対象となる機会がありませんでした。また学術的なもの以外でも、関係者による回顧録のようなものがいくつかあるだけで、昔の日本のボクシングに関する記録があまり残されていません。国立国会図書館や大きな大学図書館などにも、戦前の記録はないのです。他のスポーツのローカル化に関してはある程度分かっているのに、ボクシングは空白というのは大きな問題です。
研究成果
資料が無いと研究は進みません。そこで私は、戦前から戦中にかけて活躍したピストン堀口というボクサーのご家族に連絡を取りました。彼の日記が残されていると本で読んだので、見せてもらえないかと思ったのです。日記はピストン堀口の長男の堀口昌信さんが持っていました。他にも貴重なスクラップ・ブックや、アルバムなどがありました。粘り強く交渉し、資料を貸してもらえることになった時は、小躍りしました。また他にも、様々なデータベースを用いて、戦前の雑誌や新聞を数多く蒐集しました。
ピストン堀口の日記
これからの展望や社会的意義
私の研究は、スポーツ史や武道史、またその隣接領域に新たな貢献をするものだといえます。私の研究をきっかけに、今後、ボクシングや格闘技の研究が活発になされればよいと思っています。
専門用語の解説
- ボクシング:拳で戦う格闘技です。しばしば野蛮だと思われがちですが、実際には高度な戦略と身体技法が要求される頭を使うスポーツです。戦中の日本では、他のスポーツと同様、「武道」や「武士道」とボクシングが結びつけられたりもしました。
- グローバル化・ローカル化:人でも文化でもモノでも、ある地域で生まれたものが、その地域を離れることをグローバル化といいます。そして離れたものが、別の地域に根付いていくことをローカル化といいます。
参考文献
- 本研究の成果として、『拳の近代:明治・大正・昭和のボクシング』(現代書館、2018年)という本を上梓しました。その際、相模女子大学の学術図書刊行助成費をいただきました。
『拳の近代:明治・大正・昭和のボクシング』