相模女子大学中学部・高等部

相模女子大学中学部・高等部コラム サガジョ愛が止まらない

学校づくりの一端を担う用務員さんが、“相模女子大学”を大いに語る

学校選びのポイントの一つに「清掃が行き届いている」という項目があると聞きます。本校は校内の清掃には自信があります。なぜなら用務員さんがチームワークよく仕事に従事し、気持ちのいい環境づくりに励んでいるからです。聞けば、12名の用務員さんの気持ちが一つになるまでには苦労があったよう。そんなお話も含めて、用務員さんに日頃感じているサガジョについて大いに語っていただきました。

松山博昭(まつやま ひろあき)さん

大手印刷会社を定年退職後、本校へ。勤務歴8年。リーダーとして、用務員として働きがいを感じられる職場づくりを推進している。

下沖常男(しもおき つねお)さん

公務員生活が長かった。宮仕えから開放されたくて退職後、本校へ。勤務歴5年。週3日、11時半から19時半まで勤務し、主に清掃、整備、戸締まり・消灯等を担当している。

金子千代子(かねこ ちよこ)さん

相模女子大学幼稚部で20年以上勤務。定年退職後、中学部・高等部へ。勤務歴5年。週3日、7時半から12時半まで勤務し、主に清掃、お茶の準備を担当し、池や花の管理までこなす。

岩脇和子(いわわき かずこ)さん

夫とともに自営業を40年。その後、本校に勤務して6年目になる。週3日、12時半から17時まで勤務し、主に清掃、談話室の管理等を担当している。

よりきれいな学校を目指して一直線!
困難を乗り越えて今がある

用務員の皆さん

多くの生徒、先生たちが生活している学校をきれいに保つことは容易ではありません。幼稚部、小学部、中学部・高等部、大学が一つのキャンパスで学ぶ相模女子大学にはそれぞれに用務員さんがいて清掃などの環境美化を行っています。
中学部・高等部には男女6名ずつ、12名の用務員さんが週3日勤務(月水金/火木土)を基本に働いています。松山さんがその一員になったのは8年前。当時は今とは違って、「(用務員さん同士の)横のつながりが薄かった」と言います。

松山さん:シフト制のため、出勤する曜日が異なれば用務員さん同士が顔を合わせることはありません。同じ日に出勤していても一人ひとり持ち場が異なるため、一体感がなかったんですね。

― 松山さんは学生時代、箱根駅伝にも出場したランナーだったため、一人ひとりが頑張っていても"和"がないと成果が上がらないことを肌で知っていました。

松山さん:私たち用務員の役割は学校をきれいにすること。そして愛される学校にしていくこと。その目的を共有し、成果を上げるには一体感が欠かせないと思ったので、1年目から「こうした方がいいのでは?」と遠慮なく意見を言ったんです。

― もちろん、意見を言うからには自分が率先してやらなければいけません。掃除はしたことがなかったので「すべてが挑戦だった」と松山さん。トイレの汚れを落とすことから始めて、全力で取り組むと「きれいになるので、次第に楽しいと思えるようになった」と言います。

松山さん:みんな最初は辛いんですよね。だから、仕事の楽しさややりがいを感じないうちにやめてしまったり、いろいろな経験をしてきている人たちの集まりなので、衝突したりすることもありました。

下沖さん:私も60数年生きてきて、家のことなどほとんどしたことがありませんでした。ましてやトイレ掃除なんてまったくしたことがなかったので、ここへ来たばかりの頃は、いかに与えられた仕事をきちんとこなすかで頭がいっぱいでした。

岩脇さん:私は長年働いてきたものの、自営業だったので大勢の中で働けるか心配でした。女性は3人ずつ出勤しているんですけど、それぞれ持ち場が違うので女性同士でも(勤務時間中に)話す時間があまりないんですよね。

― そういう状況の中で、松山さんが推し進めたのは親睦会の開催でした。

用務員の皆さん

松山さん:貴重な時間とお金(会費)がかかることなので、最初は「出なくてもいいだろう」「出ても意味がない」と言う人もいましたよ。でも「そうじゃない」「意味はある」と、信念をもってやってきた結果、皆さんが必要性を感じるようになり、定着しました。今では幹事、会計を決めて、半年に一度、きちんと開催しています。下沖さんなんかは名幹事でね。話をしたり、歌ったりしながら楽しくやっています。(学校から)言われてからやるのではなく、自分たちで気づいて自主的に行動するためには、そういう場が必要だと思っています。

岩脇さん:話し合うことはいいことですよね。

金子さん:私も親睦会には賛成なんです。仕事場では出てこない話が出てくるからです。「それならこうしましょう」とか、「それはいいので、ぜひ取り入れましょう」とか。その場で解決できるので、人間関係がとてもよくなっていると思います。(顔が見えるから)申し送りも必ずしてくださいます。前日にやったことも、引き継ぎのノートを見れば「こういうことをやってくださったのね」ということがよくわかってとてもいいです。連絡というのはとても重要ですよね。

校内の風景1
校内の風景2

松山さん:いつも同僚の皆さんに「よそに負けないように頑張ろう」とお話するのですが、一生懸命やってくださいます。金子さん、岩脇さんら女性陣も、床に姿が映るんじゃないかと思うくらいきれいにしてくれるのでありがたいです。

金子さん:ある時から、学校側が専門の清掃業者を入れて部分的にきれいにしていったんですよね。せっかくお金をかけてやってくださったのだから、きれいに保ちたいという思いがものすごくあって、それからは自分が担当していない場所でも見て見ぬふりではなく、ササッと掃除をすることが習慣になりました。もちろん「私がやりました」とは言わずに、です(笑)。恐らく他の方もそうしていると思うので、今はとてもきれいだと思います。トイレの中も、除菌をしているので寝転がってもいいくらいキレイです(笑)。

岩脇さん:私は2階のトイレを担当しているのですが、保護者の方が学校にいらした時に「きれい?」と言ってくださると嬉しくなります。この間も、あるお母様が「うちの娘がね、トイレがすごくきれいだって言うのよ」とおっしゃってくださいました。そういう声を聞くと励みになります。頑張ろうと思います。

― 下沖さんは、奥様から「相模女子大学に行くようになって変わったよね」と言われるそう。

下沖さん:たしかに会社勤めの頃は、家のことなどおかまいなしで何もしなかったのに、今は家のトイレが汚れていたら拭いたりしますからね。

一同:爆笑

下沖さん:ゴミが落ちていたら拾いますし、窓が汚ければ自分で拭きます。風呂掃除も……というようにえらいマメになりまして、今は逆に煙たがられています(笑)。

幼稚園児から大人までが暮らす、
自然豊かなキャンパスが最大の魅力

週3日、学校に足を運び、「自宅以上に丁寧に掃除をしている」という皆さんに、相模女子大学の魅力を伺いました。

校内の風景 桜並木

校内の風景 いちょう並木

校内の風景 池

校内の風景 池の植物

下沖さん:一番の魅力は環境だと思います。この広大な敷地に幼稚園児から大学生の大人まで5000人近い生徒が学んでいます。私は公務員時代に北海道から九州までいろいろなところで暮らしてきました。子どもも2人いていろいろな学校に行きましたが、これほどまでに環境のいい学校はありませんでした。

金子さん:本当に環境が素晴らしいですよね。錦鯉がいる池の周りに芝生が植えてあり、夏になるとそこにシロツメクサとネジバナが咲くんです。びっしりピンク色になる中で、その北側にはタンポポがびっしり咲きます。さらに奥のほうに行くとヤマゴボウの花があったり、ススキがあったり、コゴミなどの野草も豊富なんです。ススキにしても何種類もあって、野草で生け花ができるくらいです。そういうところで幼稚部の園児たちはたぶん花を摘んだりしていると思うんです。小学部の児童は田んぼを作っています。そういったここでの体験は宝物になると思います。

下沖さん:立木も多いので落ち葉の量がすごいんです。リヤカーで何回運んでも終わらないくらいあるのですが、最近、小学部の先生が4、5人の児童を連れてきて、落ち葉の清掃をさせています。生きた教育というのはこういうことなんだなと思います。20人くらいの園児がぞろぞろぞろぞろ散歩している姿も見かけます。こんなに安全で、穏やかな環境の中で散歩ができるのも素晴らしいと思います。

金子さん:昔はツクシが南京袋2袋分くらい採れたので、袴を取って炒めたりしました。シイの実はから煎りしていただくとピーナッツよりもおいしいんです。園児も食べています。毎日の生活の中で四季を感じられるというのが、この学校の大きな魅力だと思います。

校内の風景 ヤギのバニラ

校内の風景 桜の木

校内の風景 落ち葉遊び

校内の風景 木の実

下沖さん:校内に柿や夏みかんや柚子がなっている。そんな学校はほとんどないと思いますよ。100年桜もありますし、ヤギもいますしね。

一同:

下沖さん:昨年(2016年)の春には子ヤギが2匹生まれましたから。

金子さん:夏みかんはたぶんタネからできたと思いますよ。ものすごく酸っぱくてね。食べられない、レモンみたいなみかんですけどね。アカシアもいつの間にか生えてきて花を咲かせるんです。それはきれいです。

岩脇さん:本当にいいところで働かせてもらっているなと思います。生徒さんも「こんにちは」「ありがとうございます」って気さくに声をかけてくださって。この間は「おばちゃん、かわいいね」って言われました(笑)。

一同:

岩脇さんと金子さん

岩脇さん:「あら、どうしましょう」って(笑)。孫でさえそんなこと言ってくれないですからね。若い子たちと触れ合うことができるのも、この仕事の素晴らしいところ。できる限りはばかって頑張ろうと思っています。

下沖さん:本当にいい生徒さんばかりで、廊下や階段を掃除していると「ご苦労かけます」「ありがとうございます」と声をかけてくれるんです。女の子にほめられたことがなかったので舞い上がるんですよね(笑)。

一同:爆笑

下沖さん:もっと頑張ろうという気持ちになります。

金子さん:教育の現場で働けるのは最高ですよね。得るものがとてもあります。朝7時頃には部活で生徒さんが走っているんです。「おはようございます」と一声かけてもらっただけでパワーをもらったような感じがして、「これからお仕事、頑張らなきゃ」って思います。

金子さん

松山さん:自分たちも楽しいんですよね。

金子さん:私が担当している(中学部・高等部校舎のそばにある)池には15匹くらい立派な錦鯉がいます。毎日様子を見ていると、いろいろなことに気づくんです。今日は元気がないなとか。この鯉はタテに泳いでエサを食べるんだなとか。大きなエサなのに無理に大きな口を開けて欲張りだなとか。様子を見るのが楽しくて、仕事がお休みの時も学校に来てエサをあげています(笑)。池の中が真っ白になるほど産卵した時は、小さないけすに移してあげました。すると何匹かかえったようで黒いものが動いています。長生きしてもらいたいので、暑さ、寒さをしのぐにはどうしたらいいかしらと思ってインターネットで検索したり、蓮の花を小学部からいただいてきて池に入れたりしました。エサも一度にたくさんあげてはいけないらしいんですよね。小分けしてあげるために先生方も協力してくださいます。池の近くを通った生徒さんに「エサをあげてみない?」と声をかけると、「あげる、あげる」と言う子がいるので、手の平にエサを乗せてあげます。何度かあげていると鯉に愛着が涌いて「名前をつけなくちゃ」なんて言ってます。グラウンドで部活をやっている生徒さんも、私がいると飛んできて、「今日はどう?」などと言って池をのぞいています。そういう交流がとても楽しいです。

岩脇さん:私は、先生方が部活の指導などもあって忙しいのに、こまめに勉強の面倒を見てあげている姿にいつも感心しています。個別指導って言うんですか? 公立校じゃそこまでやってくれないんじゃないでしょうか。

金子さん:朝早くから本当に忙しそうにしているけれど、先生方は面倒見よく生徒さんとかかわっていますよね。

近所の方から愛される学校。
それが嬉しいし、誇りに思う

徒歩で通勤できるところにお住まいの皆さん。地域の代表として、外から見た相模女子大学について伺いました。

校内の風景 登校の様子
校内の風景 しだれ桜

金子さん:最近、とても評判がいいですよ。相生祭(文化祭)は近隣の方も楽しみにしていますし、桜の花見などにもたくさんの人が来ます。
※イベント時は地域に開放しています【→相生祭紹介動画はこちら】

松山さん:学校を訪れる方が増えていますよね。それは地域に愛されているということ。とてもいいことだと思います。

金子さん:(キャンパス内には)元陸軍通信学校の施設や防空壕がまだ残っているんです。フランス庭園のしだれ桜もきれいです。

松山さん:お花見に誘ってくれる人がいて、そういう人たちと校内を歩いている時に「学校がきれいだね」と言ってくれると嬉しくなります。やりがいや誇りを感じるから、皆さん、自然と出勤時間が早くなってしまうんですね。下沖さんは1時間くらい前に来てるよね。私も45分くらい前には来ています。あんまり早いのも悪いなと思うんですけど、「今日は学校だ」と思うとついつい支度が早くなって、家を出る時間も早くなってしまうんです(笑)。

下沖さん:家にいてもすることがないしね。

一同:

岩脇さん:女性もそうですよね。皆さん早くて、(出勤時間の)30分くらい前には来ていらっしゃいますよね。

金子さん:皆さん、まじめです。

松山さん:自主性が育ってくるというのはこういうことなんだと思います。自然とそうなっていったからすごいと思います。皆さんに感謝しています。

下沖さん:(自分の中で)家庭と学校が分かれていないんですよね。どちらも自分のテリトリーだと思っているから、気になったことはやらなきゃ気が済まないんです。私がそうなんだから、女性陣はもっといろいろなことに気づいて、自分の家以上に学校をきれいにしているんじゃないかと思います。

金子さん:決められた時間内でやるわけですから限りはありますけどね。少しずつでもやっていけばもっときれいになると思います。

掃除中の松山さん

松山さん:いっぺんにきれいになるもんじゃないもんね。掃除をしているとよくわかるよね。

金子さん:そう。だから空いている時間についやってしまいます。

松山さん:きれいになると嬉しいから、それが早く出勤する原因になっちゃったかもしれないね。

松山さん:(うなづく)

松山さん:教育の仕方がいいのか、伝統なのかわかりませんが、素晴らしい環境の中でのびのびと生徒さんが育っている。だから私たちも自然と応援したくなる。我が家のように手をかけることで近隣の方にも愛される学校になる。そういういい循環が生まれているのが相模女子大学中学部・高等部だと思います。

金子さん

松山さんと下沖さん

岩脇さん

皆さん

金子さんが“お茶”への思いを語る

女性用務員さんの仕事の一つにお茶の用意があります。昼休みに向けて大きなやかんにほうじ茶を作り、中1の各教室に準備します。そのほうじ茶にもこだわりがあって、「有機栽培にこだわる静岡の村上園から、無農薬のお茶を取り寄せている」と言います。

お茶への思いを語る金子さん

金子さん:自動販売機で売っている飲み物が好きなお子さんもいますが、身体をつくる大事な時期なので、お茶を飲むのなら私たちが作ったお茶を飲んでいただきたいと思っているんですよ。夏は冷たく、冬は温かくしています。

― なぜ、お茶を?

金子さん:学校の方針だと思いますが、和を持てるからではないでしょうか。生徒さんに和やかにお食事をしてもらいたいという思いから、お茶の提供を始めたのだと思います。そのお茶を気に入って、中2になっても「飲みたい」という生徒さんがいるので、中2にもやかんを1つ用意しています。中1はクラスに1つですが、中2は学年に1つなので、飲みたい子は持参したマイボトルに入れて飲んでいます。

― 思い出のお茶になりそうですね。

金子さん: そうなんです。小さいことですが心に残ると思います。お茶はもちろん、シイの実を煎ってもらって食べたこと、池の錦鯉にエサをあげたこと、そういうなにげない出来事が思い出になっていくと思います。どんぐりもころころっと転がって畑に入ると芽が出てくるんです。大木になったら困るのですぐに抜くのですが。自然が豊かな環境の中で心あたたまる思い出を積み重ねていけるところが、相模女子大学中学部・高等部の素晴らしいところだと思います。

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